北九州には関門海峡の荒い潮風がいつも吹きすさんでいて、建物ばかりでなく、人の心の中までも錆びつかせていくようだ。
帰ってすぐ、同郷の役者である有門さんと飲む。小倉駅のビール一杯100円の誰も焼肉を食べていない焼肉屋で。お互い役者も長いので、今さら「がんばろうね」なんて励まし合う仲ではない。もし「辞める」という決断を選んだとしても、それでいいんじゃないってお互い言えると思う。同じ思いを共有できる人って一人いれば充分だよ。「居てくれて、ありがとう」。ますます自分の信じる芸術の世界からかけ離れていくこの日本の状況だけど、一人になってもやるつもりでいるから、逆にまだたくさん信じられる人たちが残ってることが奇跡で、「神様、ありがとう」。
昨日は門司港にある門司出身の作家、林芙美子さんの記念室へ。なんと偶然昨日は林芙美子さんの戸籍上の誕生日。極度の近眼のため、机に顔を擦りつけそうなほど近付け、あまりの筆圧に机が動いてしまうのをふせぐため、重たい机にかえたそう。作品づくりに対する狂おしいまでの姿勢に強い共感を覚える。
私は心を噴きあげるような
いい作品を書きたい。
指を食い、腕を食いながら、
私は此次のものへかかってゆく。
林芙美子
父と紅白歌合戦。
見ながら悲しい気分になる。
昔の紅白も退屈だった。
退屈だったけどいい歌うたいが出てた。
眠気を我慢しながら見るのが紅白だった。
でもどの歌手も媚びてなかった。
歌うたいのプライドを持って立ってた。
歌も立ち姿も美しかった。
毅然としてた。
子供には分からないけどね。
今はみんな子供向け。
大人も子供もみんな子供。
誰が誰に向けて何のためにつくって(うたって)いるんだろう?
ニコニコしたふにゃふにゃな人たち。
毅然として立つ。
状況は関係なく。
まっすぐ。
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