11月に訪れた伊豆下田のペンションの近くにあった“山ん崎”という海辺の大きな岩場がその劇の一幕の舞台になっていることを知ったからだ。確かに舞台図に描かれている。
この劇の原作を書いたのは曲亭馬琴。
今、最も気になって読んでいる江戸時代の物書きだ。
その膨大な著作物を死ぬまでに何冊読めるだろう。
紙と木の文化である日本人にはヨーロッパのように建築で何百年も前の先祖の魂や文化に触れることが出来ない。残っている歴史的な建造物も、一部の非常に限られた地域の観光地にまばらに残るだけで、現代の生活に密接につながるものではない。その中で残る先人の精神はこうして紙に書かれた文字の中にしかない。それが残されていることは本当に奇跡だと思う。印刷が発明される前に書き写すことで残してきてくれた人たちに心から感謝する。
日本をよく識ることで、これまで大好きで読んできたヨーロッパの文学や文化芸術を比較しながらより相対的に識っていけるのではないかと昨年末に気付いた。日本人なのに日本のことを知らなすぎる。
即、金になったり作品につながったりとかいう考えではなく、ライフワークとして日本人の文化をより深く追求していくこと。それをこれから続けていく。残されている日本の古い文章はとりあえずすべて読破する。
それが残された人生のひとつの仕事。
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