ポンピドゥーセンターみたいなベルリンの工事現場。
人に一番影響を与えるのは建物と街並かも。
日本では昔の人がつくった素晴らしい建築も、ただ「古い」という理由で容赦なく壊される。
建築家の感性が一番高まっていた時代の、職人の手仕事の技術が最高に高かった時代の、そしてそれを実現しようとする気持ちと実現できるだけの財力もあった時代の、お金持ちが美しいものを知っていた最良の時代の、その時代にしかできない建築物を、現代の貧しい感性しか持たない人たちが平気で壊していく。そしてその後にどうしようもないものを平気でつくる。
海外で生活すると、その街の建築物や街並によって着る服や考え方、生き方まで変わってくるのが分かる。日本では、無頓着に、無感覚に、無計画に、なるがままに街は変わっていくが、その変化が与える影響は計り知れない。そしてまた、その人間が建築をつくるのだから、下降にしろ上昇にしろ、そのループは無限に続いていく。
ベルリンは、工事中のビルですら美しい。そこにもデザインがある。
工事現場が薄汚くなければならないというルールは、どこにもないのだ。
「一番大切なことは、目に見えない」と星の王子さまは言った。
けれどそれはフランスの作家の言葉だ。
一番大切なものは目には見えないかも知れない。でもきっとその次か、その次の次に大切なものは目に見えるものだ。目に見えないものが目に見えるものをつくる。そしてその目に見えるものが、目に見えないものに影響する。目に見えるものをおざなりにすれば、それは目に見えない一番大切なものをいつか侵食し、破壊する。