黒沢美香さんが亡くなった。
ネットでの情報だけど、見て、「えっ」となって…。
美香さんとの出会いは2007年、福岡ダンサーズとして「sing sing sing」に出演したのがはじまりだからもう10年近く前。この年は黒田育世さんとも初めて会って舞台を共にした年だから、本当にダンスで世界が広がった一年だった。正直、それまでのダンスのイメージは「手をひらひらさせて、体をくねくねさせて動くこと」でしかなかったから。踊りながら、これでもかってくらいに稽古して、共演者とバチバチ火花散らせながら踊って、「踊りでここまでなっちゃっていいのかな?」が「ここまでいかないと踊っちゃダメなんだ」に変わっていった。だって、本番前日に「もし明日、踊りたくないと思ったら、踊らずに客席で見てもいい。それもダンス」と美香さんが言い切って、本当に客席で見てた参加者もいたぐらいだったから。ずっと稽古してきたのに。本気で。
その当時の日記にはこう書いていた。
「昨日は気が狂うかと思うほど美香さんのダンスが怖かった。
怖いものは怖いままにしていたくない。飛び込んだ。
美香さんのダンスは人生。人生って言葉じゃ軽くなっちゃうな。
とにかくすごいです。
育世さんもそうだったけど、踊りの世界の本気の人ってちょっとすごすぎる。
ほんとにすごすぎる。 」
「sing sing sing」の後の美香さんのソロ、ゆっくり出てきてマッチ箱を客席にばら撒く美香さんを見ているだけで、涙が溢れて止まらなくなった。マッチ箱をばら撒くだけで人を感動させるって何なんだろうって、本当に考えさせられた。
数年前に美香さんの舞台にオファーを頂いたけれど、予定が詰まっていて出られなかった。今になって思えば、もう取り返しがつかない。体が悪いっていうのは聞いていたけれど、それでもずっと元気に踊っていたし、これからもそれはずっと続くのだと思っていた。「この次」というのは存在しない。自分にも、相手にも、そんなに悠長に時間は与えられていないのだから。お金も本当に大事。ないと生活できなくて死んじゃうから。でもそれより大事なものは確実にあると、今は強く思う。ただ生きることよりも大切なものは確実にあると、今は思う。
自分の能力を最大限使って、これだと思う人の、これだと思える作品に、人生をすべて捧げること。これが役者としての自分の人生。
そして映画監督として、そうした作品を自分の手でつくり続けること。
人間は死なない。決して死ぬことはない。
死なないからこそ、本気で生きなくてはならない。
美香さんも死んじゃいない。いつもそこで見てくれている。
本気で踊らなきゃ。いつも本気で。
2016年12月2日金曜日
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